JUGEMテーマ:経済全般

 

(文責・堀内)

 

 新型コロナの感染が拡がっていることから、休業や自宅待機を求められる国民に一律又は事業別の定額を給付する話が持ち上がっていますが、首相が「108兆円の景気対策」とか、「一家族30万円の給付金」と言っても、お金をもらうことに反対の人はほとんどいませんが、感染病棟の整備や検査キットの増産も含め、財源の話がないのが腑に落ちない所です。

 

 マクロ経済学の公式はG(政府支出)=T(税金)で、ここでTなしにGを増やすという考えはなく、実際にやったら必ずインフレになります。政府が輪転機を廻すことで支払いはできますが、通貨の価値は大幅に下落します。自宅待機では収入も上がらず、これは物価の上昇に収入が伴わないスタグフレーションになります。また、財源の裏付けなしの紙幣の増発にはワイマール体制下のハイパーインフレという恐るべき例があります。

 

 日銀は金融緩和で停滞に陥った事業所に資金を提供する必要はありますが、それは政策金融公庫や市中銀行による高い金利や厳しい担保条件の緩和など金融政策(ガイドライン)によって行うべきで、貸倒引当金の引き上げなどで背後から政府が支援する必要はありますが、これとEDR(医療体制)を守るために行うロックダウンと国民生活の支援は別のものです。

 

 

 例えば、常時農畜産物を飼養している農家は生活費以外の資金が必要ですが、従業員の生活費だけ保全すれば良い事業所もあります。こういった個々の事情に対するには融資の方が優れています。ですが、年金生活などで実感できる通り、生計の維持には現金が必要です。現在の日銀がやっているのは金融政策ではなく、株式市場の買い支えですが、これは市場それ自体をフリーズしてしまうという考えもあります。証券取引所を閉鎖して株価をパンデミック前の3月1日の株価で凍結する。人間の作ったものに止められないものなんかありはしません。

 

 頻発している大量解雇は裁判所による停止(差止)命令ないし解雇無効判決がありますが、日本の裁判所が前例踏襲主義の諸事緩慢で役立たずなことには定評があるので、これは考えないこととし、お金の話をしますと、待機期間4ヶ月で7千万人の就労可能人口(18〜65歳)に給付する費用(10万円/人)は事務処理経費抜きで7兆円、4ヶ月だと28兆円になります。予備費や補正予算では間に合わず、財源が必要です。4ヶ月の根拠は前のコラムでも触れましたが、日本と現在パンデミック中の欧米諸国との医療格差です。マイナンバーを提示することで給付すれば事務処理費用はほとんどかかりません。

 

裁判所も三権の一つなので政治力を行使できます。司法謙抑主義により裁判所による政治への介入は抑制されていますが、積極主義の時代もあり。制度上は最高裁判所長官と事務総局で決められます。ですが人もインフラも貧弱すぎて話になりません。

 

 最初に議論されたのは消費税でした。消費税1%でおよそ2兆円、現在の10%では20兆円(実際は19.4兆円)になります。これを当年限りで「受け取らない」だけでよく、浮いた税金は運転資金に充てたり購買に充てることができますから、途中から利権絡みの変な小細工をしなければ最も簡便で効果的だったでしょう。ですが、すでに手遅れで、今の事情を見てこれで間に合うと思う人はいないでしょう。

 

 ほか、株式会社は三百万社ありますが、法人税の大半は優良企業三千社で、ほとんどの企業は払っていません。法人税収は年12兆円、課税率の平均は30%です。ここで当期純利益をも含む経常利益全部に100%課税を行えば40兆円を調達できますが、これは国民全員に給付を行い、医療体制を整備するのに十分な金額です。不十分であれば翌年も課税すれば80兆円が賄えます。

 

 優良企業の多くは潤沢な内部留保を持ち、1〜2年の赤字には耐えられます。会社が潰れることはなく、従業員も解雇されず、より財務基盤の弱い企業や個人も救われます。工場も従業員も傷つかず、おそらく最もスマートで傷の少ない方法ですが、税金を取られる優良企業も含め、政府に対する国民の視線は極めて厳しいものになるでしょう。できる政治家もなく、リーダーシップもありません。ですが、実は過去に一度だけ例があります。

 

 この病気については分からないことが多いのですが、充実した医療体制と装備が死亡率を下げることだけは分かっています。我々個々人としては、財源をしっかりとしたものとし、体制を作ってもらった上で、PCR検査に自ら赴いたり、検査入院や治療を甘受することの方が、症状を隠して生活のために出社するよりも勇気のいることと思いたいものです。

 

 同じもくせい舎でも、私と河野は考えが違うので、このコラムではあまり深刻な話はするな、特に政治話はヤメロと言われているのですが、どうも見るところ、この病気との付き合いは長いものになりそうです。1ヶ月や2ヶ月の話ではない。なので、昔受けた財政学の講義をベースにした深刻な話はこれくらいにして、後はもう少し楽しい話をしたいと思います。

 

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