JUGEMテーマ:国内小旅行

 

(文責:河野)

 

 「日本100名城」をめぐる旅を2016年に始めてから、この4年間に沖縄を除く全都道府県に訪れた。それ以前から、史跡や温泉めぐり、大河ドラマの舞台などを訪れる旅を楽しんできたが、そんな旅の中で、思わぬ地域差に気づくことがある。その一つが「しょうゆ」である。

 

 

 きっかけは2015年5月、その年放映されていた大河ドラマ「花燃ゆ」の舞台となっていた山口県萩市周辺を訪れたときだった。萩から下関へ至る山あいにある俵山温泉に宿を取り夕食を食べたとき、刺身のしょうゆが「甘い」ことに気がついた。聞いてみると、魚の煮付けによく使うため、この地域では甘いしょうゆが好まれるという。

 

 

 しょうゆに甘みをつけるために、山陰では「再仕込み」という手法で作られたしょうゆがあることも知った。しょうゆは大豆と小麦で作った麹に塩水を加えて仕込むが、「再仕込みしょうゆ」は、塩水のかわりに、できあがったしょうゆを加えて作るという。コクの深いしょうゆができ、甘みも加わって濃厚な味となる。

 

 萩に行った翌年から「日本100名城」の城巡りをスタートし、さらに行動範囲が広がったが、こうしたことから、訪れた先では地元のスーパーマーケットに立ち寄って、その地域で醸造されたしょうゆを見て回るようにしている。良さそうなものは購入し、日々の料理に使っているが、同じしょうゆであっても味はそれぞれで、毎日の食事の中にも小さな「旅」を感じられるようになった。

 

 

 そんな中で驚いたのが、この甘みの強いしょうゆが、実は全国各地で作られていること、特に九州で多いことだった。スーパーマーケットの「しょうゆ」の陳列棚には、大抵全国展開しているキッコーマン、ヒガシマルのしょうゆが列をなして並んでいるが、その一方で、地元で醸造されたしょうゆを見ると、キッコーマンとは一味ちがう「甘い」しょうゆが大半であることに気づく。甘いかどうかは、味わってみなくても原材料表示を見れば判別できるのである。

 

 例えばキッコーマンの最もスタンダードな「キッコーマン しょうゆ」の原材料名は「脱脂加工大豆、小麦、食塩、大豆、アルコール」で、旨味を増すためやカビ防止のためアルコールを添加していることも含めてごく普通のしょっぱいしょうゆである。
 しかし、甘いしょうゆは原材料名が違う。大豆よりも、小麦よりもまず一番に表示されているのは「アミノ酸液」で、そのほかに糖類や甘味料、調味料を加えて甘みや旨味を加えているものも少なくない。本来、甘みや旨味は発酵の結果として醸し出されるものだが、それらを人工的に加えているのである。結果的に「本醸造」と表示されているもの以外は、すべてこうしたアミノ酸混合のしょうゆになっている地域も少なくなかった。

 

 ごく普通(と私が思っていた)キッコーマンのしょうゆで育った私は、しょうゆは「しょっぱい」と思っていたが、「甘い」しょうゆが普通の地域もあることが、新鮮な驚きだった。このようなアミノ酸混合の甘いしょうゆが広がったのには、醸造業が味わった苦難の歴史があるのだが、その話はおくとして、特に九州で甘いしょうゆが好まれるのはなぜなのか、これもまた城めぐりの旅を通して感じるところがあった。

 

 

 宮崎県日向市にかつてあった飫肥藩では、薩摩藩から門外不出のサトウキビが持ち出され、極秘のうちに栽培を始めたことから、藩を支える重要な産物の一つとなった。名物の「飫肥天」は特産の黒砂糖を使った天ぷらで、飫肥城を訪れたときに味わったが、とても甘かった。

 


 鹿児島から全国に広まった「さつま揚げ」も、魚のすり身に塩、砂糖で味付けし油で揚げた料理である。砂糖はもともと輸入品で江戸時代になってようやく琉球や奄美などを傘下にした薩摩藩が産出するようになった貴重品だった。だから砂糖の甘さは、大変ぜいたくな「おいしい」味として認識され、ある種九州のアイデンティティになったのではないか、というのは考えすぎだろうか。

 

 九州で甘いしょうゆが好まれる背景にも、そんな歴史があるのかもしれない。


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